戦国炒飯TVと、村井良大さんに寄せて
「戦国鍋TV」という一大コンテンツをご存知だろうか。
その素晴らしさは後日語るとして(絶対に長いから)今日は村井良大さんの話をしよう。
村井良大さんは俳優である。
戦国鍋TVは、俳優たちが文字通り歴史上の人間に扮するわけなのだが村井さ‥もう村井くんと呼んでしまうが番組内で彼はとんでもない数の役をこなしていた。
「兼役」なんて呼ばれていたが、洒落ではなくて戦国鍋TVで彼を見ない回はないというくらい出ていた。
世の中、何をどうもって「演技が上手い」と評するのかは分からない。
が、村井くんはとにかく「役者に向いている人」なんだと思う。普段の彼(メイキングなんかに写っている部分、という話)はなんとなくボーッとしているというか、過剰に騒いだり声を荒げたりしない人という印象だ。
ブログもやっていないしSNSもない。
彼が自分のことを発信する場は極端に少ない。が、彼はどんな役でもやれてしまう。
うるさい役。面白い役。ヘタレに横暴に関西人。熱い男‥
大抵の人間には「ベース」がある。
賑やかな人、根暗な人、そういう人は上にどんな役を塗り重ねても時折素地が見えるものだけど、彼の場合は見えないのだ。
我々に見せている彼の素地は、どちらかと言えばワイワイ騒ぐことのない、おだやかな人という感じなんだけども。
バカみたいに大声を出す熱い男をやっても、運動音痴のへたれをやっても、横暴な殿様をやっても、まったく違和感がないのだ。
俳優はいわゆる「中の人」であり、
演劇というのは「その本人ではないことを客も理解した上での茶番」つまり着ぐるみがなにか喋っているような、ミッキーが着ぐるみだとみんな知っているのに「まるで知らないように感動している」ような滑稽さがあるはずなのに
舞台上の村井良大にはないのだ。
「舞台上の架空の存在」を着ぐるみだと思って剥がしてみたら、筋肉と内臓が出てきた、みたいな状態だ。
彼は架空の存在を生身にできるのだ。
架空の存在こと役のモノマネをするのではない。それを”演技が上手い”と評するのはなんだか軽すぎる気がして、私は”血肉になれる人”と呼びたい。
戦国鍋TVに彼が出まくっていた時、彼はまだ20代前半だった。信じられないとしか言いようがない。戦国鍋TVの現場には、彼より年上の俳優も芸歴が同じくらいの同世代の俳優も駆け出しの若手も入り混じっていたはずだが、彼はそこにまるで「座長」のように存在していた。
誰よりも役を多く演じ出演回数もダントツ、そしてなにより戦国鍋TVが大ヒットするきっかけとなった役を演じ抜いた彼には重鎮という言葉がしっくりきていた。そんな彼がその時20代前半だったわけか‥信じられないな。
彼の戦国鍋TVでの真骨頂は2013年の「武士ロックフェスティバル」だろう。
2時間強のライブで一人8役を兼ね、舞台裏で汗だくになりながら早着替えし、彼よりも兼役数の少ない俳優ですらダウン寸前だった舞台で彼は最後まで全ての役を演じ分け歌い切り踊り抜いたのだ。
それを嘆きもせず自慢もせず、淡々と。
彼の代わりはいない。
それを強く思ったLIVEだった。
彼はここ数年、ミュージカルへの出演がぐんと増えている。
「RENT」「Death note」の主演。というか、出演する舞台、ミュージカルで主演でないことの方が少ない気がする。
彼よりも歌が上手い人間も、背格好がいい人間もいるかもしれない。けれど彼は主演に選ばれるしとにかく出演作品が途切れない。
彼には選ばれる理由が確かにある。
今、観に行くべき俳優の一人であると私は思う。
その理由を知りたい、観たい、と心の底から思う。
2020年は、村井良大さんを観たい。