「サメと泳ぐ」を観てきた感想 青は死の色

サメと泳いできた ねたばれ感想



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死は青い光を放ち、サメは死神である


「死は青い光を放つ」そうだ。死にゆく線虫に紫外線を当てて観察していると、
死の過程で青い光を放ち、死の瞬間最大に達し直後に消える。

「サメは死神(死の象徴)」というのは私がBBCのシャーロックS4を観て個人的に意識してるいることで
「サメと泳ぐ」の劇中、何度も青い光で照らされる舞台を観て あ〜不穏だな〜と
ワクワク(オイ)していた。


観劇開始、誰かが誰かに銃口を向ける不穏なスタート
ヴィヴァルディの四季より「冬」がかかって・・

https://youtu.be/PPgMbXAqkH4



私「ジョーズかな????」

サメってそっちかよ!!!!!!!「サメ」という題名に引っ張られすぎて
リズムといい不協和音といいジョーズ迫ってくるBGMにしか聞こえない!!!
パニック面白舞台なの!?
と思いつつのスタート(笑)(っている場合ではない)




ガイ(田中圭)は何度心の中ではるたんやん
と呟いたことでしょう。

TBSドラマ「おっさんずラブ」で田中氏が演じていた
素直で、バカで、一生懸命なリーマン「はるたん」にそっくりなのです。
一生懸命。素直。そして脳年齢が80歳なんだよ!!!(半ギレ)
バディ(田中哲司)が「こいつは頭が悪い」といっていたのですが、
分かるーーーーーってかんじ。

でも素直なんだよ。人間誰でも分かれ道があったら「自分に得がある方」に進むよね?
ガイの場合はそれがひっじょーーーに分かりやすいというだけのことで。
この場合の「得」は

・ドーンを喜ばせること、ドーンの恋人になれること
・一流の脚本家になること、バディに認められること

であって、つまり
恋&仕事どっちも成功したい!
っていう誰しもが当たり前に思うこと。

他の人なら「無理だな」「やめとこ」ってなりそうなところを
自分にも他人にも素直なガイは分かれ道でしっかり自分の得になるほうを見つけて、
そっちに進めるんですよ。
そして、人に影響も受けやすいんですよ。



私、ガイが特別野心家であるとか、そういう風には思わないんです。
そこに夢がある。夢の為には

★目の前のタスク(雑用)をこなしてバディに認められなきゃいけない
→リスク回避しつつこなす
★そこに愛する女性がいる
→ちゃんと恋人になりたい→地位を得なくちゃ→バディに認められなきゃ
→彼女を悲しませたくない→映画をポシャにしたくない→修正してでも形にしてあげたい

って言う感じで、まるでロ−ルプレイングゲームのように淡々と
「霧の中」のハリウッドを突き進んで行く。
彼は天才でも異常な人でもドMでもなくて
「目標のために頑張る」という小学生の標語みたいなことを
ひねくれずに狂わずにやりぬける「具体的な夢のある、ただただ素直で真面目な人」
だなと私は思いました。
こういう人は本当に羨ましい。だって夢の為にまっすぐ努力ができる。
もっと人格者で才能を伸ばせる上司のもとについたなら。
脚本一本で勝負しよう!という気持ちがあって、
そういう人のいい本がきちんと採用される映画界だったならば。
きっとガイは脚本家として、明るい人生を送れたかもしれないのです。



最終目標(ドーンと愛し合い続ける、脚本家として映画界でのし上がる)
ための小タスクをこなし続けるうちに、
ゲームの世界で装備や強さがレベルアップするように彼自身も変わっていく。
本人の最終目標も、気持ちも、変わってはいないんです。
ずっとドーンが好きで、ずっと脚本家として一流になりたくて
パワハラ職場でも頑張って、そそっかしくて一生懸命なガイのままなんだけど、
ストレス(パワハラ&人格否定)を受け続けた心が
柔らかいままでいられるわけはなく。
場数を踏む度に経験値は上がり、装備も心も強くなり、頭の回転も速くなる。
それは成長でもあるし、闇に落ちるとも言える・・
バディや映画界の男社会を嫌うドーンや、
あの初期の純情童貞()みたいなはるた・・ガイたんを知っている
我々からみると
ガイの最終目標への着実なロールプレイングゲーム

ガイたん、闇堕ちへの道

にしか見えないのだ。嗚呼、人とはなんと哀しい生き物なのか。
ガイは頑張っているのに。
彼はパワハラを容認してはいない。辛くて苦しくて、
夢を叶えればここから抜け出せるんだと頑張っていて、
しかもかなり順調に進めているのに(物語は1年以内の出来事)
夢への道と、闇堕ちへの道を、
本人が自分の為に強くなればなるほど 無意識のうちに同時進行で歩んでしまっている

というのがめっちゃ怖い。なんだこれホラー??
つまり、まっとうな人間は成功できない世界なんだと言うことなんですよ。
マフィアかな?


「まっとうな人間をやめる」覚悟をしたわけでもなく
本当に無意識のうちにそんなマフィ・・映画の世界の
トップあたりの人間になってしまっていたガイくん
タスクをこなし続けられる素直さがあったばっかりに・・(泣)





一生懸命頑張ったのに、結局自分はバディに切り捨てられる運命だった上、
愛するドーンからは「映画界で成功した今の自分」は受け入れてもらえず
(ドーンは、闇堕ちする前のガイで良かったんだよね。ああここが哀しい。)
バディかドーン、仕事か恋。まるで映画の様な選択肢

彼が仕事を取ったのは、ドーンの言う「また1から頑張ればいいじゃない」が絶対嫌だったからだと思うんです。
俺が雑用にも暴言にも人格否定にも耐えて
恋人も失って 血反吐を吐いた1年を
この地位を捨ててやり直せだぁ!?
ふざけんな!!!!!!!

というやつです。うん。ドーンのいうこと間違ってないよ。
バディはクソだし、ガイは変わってしまった。だからゲームをリセットして、
もう一度正しい道の為にやり直そうよ?ということ。正しいよ。
ドーンはそれが出来た。自分の経験があるから、彼を正しく導こうとしている。

でもガイは、できなかった。
映画界でのし上がることがどんなに苦痛を伴うか、
どれだけやらなければ映画界で輝けないのか知ってしまったから。
バディのもとを去ったら、「また1から」やり直さないと、脚本家に・・なれない。
それは嫌だ!!
「また1から」がただただ本当に本当に嫌で、無理で
バディを選んだんだと私は思いました。
でも人間、そうだよね?
自分が1年かけて必死で書き上げた論文(手書き)を破棄されて
「もう一回書いたらもっといいものになるよ!」
って言われたら刺しますよね?(物騒)(違)
何度も言うけどガイは、自分にも、他人にも、素直なんだよぉ。
決して、悪者ではないんだよ・・
















銃を放つ直前、ガイが悲痛な声を絞り出して言ったごめんなさいという言葉。
彼はその時まだ人間だったんだと思う。心に柔らかい部分のある人間・・
バディを選んで、会社のNo3になったガイ。
「唯一の存在」だったドーンを自分で殺して
「いつか地に足のつく場所で、自分の撮りたい映画を撮る」こと夢見た
自分を捨てて、「バディが体現する映画の世界」で生きることを決めたガイ。




誰もいなくなったオフィスでかたかたなるおもちゃをならして突っ立っているNo3。
「死」を意味する青も消えて、舞台が真っ暗になっていって・・

ああ、この人は全部ぜーんぶ失って、
死の概念すらない暗闇の深海でずっと生きていくんだ

って分かったら、もう震えた。悲しくて・・
だって初めて事務所に来た日のおどおどした彼が、
腕まくりして慣れない仕事一生懸命頑張る映画が大好きな彼が、
ドーンにデレデレしちゃう彼が、変な動きしちゃう彼がもう大好きになってたから(泣)
ガイあんなに頑張ったのに、
彼が大好きだったもの・・映画への憧れも情熱もドーンも全部永遠に消えてしまったんだ
と思ったらしんどくてしんどくて。




もうガイには来世で幸せになって欲しい。
今世は、きっと、無理なんだろうな。
海の底で、何にもない世界で
終わりを待つんだろうな